広域大災害から子育て家庭を守る「遠隔共助」の仕組みづくり

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日本の国土の広範囲が同時に被災するほどの未曾有の大災害が起きたら、あなたはどこに逃げたいですか?どこで暮らしたいですか?

 

大阪管区気象台 南海トラフ地震特設ページ 

近い将来起きるとされる広域大災害をはじめ、私たちに降りかかる様々な災害から家族を守るには何が必要か。2022年4月、大阪と岐阜で活動する子育て団体が出会い、災害からこどもを守る「防災」の重要性に共感し、平時・有事両面での相互協力を取り決めたパートナーシップを結びました。

子育て当事者の防災意識向上と、こどもの学びと成長の拠点である保育園や幼稚園、児童館などにおける防災対応力強化(BCP策定支援)など、相互に連携することによるメリットを活かし、災害時に弱い立場になりがちな小さなこどもやその家庭を守る仕組みとして、「遠隔共助」を提唱しています。

能登半島地震を受け、全国の子育て団体との連携をさらに強化し、支援が必要な地域に迅速な支援の手を差し伸べることができる体制の整備に注力しています。一方、私たちだけの力では及ばない課題に対しては、防災やまちづくり、子育て支援、DXなど、様々な知見を持つ専門家の力をお借りし、次の災害へに備える「新たなセーフティネット」の社会実装を急ピッチで進めています。



【現状と課題】

 南海トラフを震源とする巨大地震の発生が懸念されています。令和6年8月8日の日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震発生に伴い、気象庁から「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表され、不安を感じた方も多かったと思います。

その後、この発表に伴う「特別な注意の呼びかけ」は終了となりましたが、いつ南海トラフ地震が発生してもおかしくないことを改めて感じると共に、私たちは「日頃からの地震への備え」の強化を引き続き呼びかけています。

 南海トラフ巨大地震や同規模の地震が発生すると、国土の広い範囲が「被災地」となり、地域住民の全てが「被災者」になります。平時は、地域内での共助の体制が整い、機能していたとしても、広域大災害が発生すると共助の担い手が存在しない、そんな深刻な事態に陥ります。

 各地の自治体では、災害時に地域内に住民を安全に避難させる場所がないため、域外への避難である「広域避難」をマニュアルに記載するなど、明確に呼びかけるところが増えています。これは、自治体単独では、全ての住民の安全を確保する力がないことを明言していることと等しく、住民は大災害から生き延びるためには、各自の判断で域外へ避難するしかありません。

 

 しかし、小さなこどもがいる、あるいは発達障害をはじめ心身の障がいのあるこどもがいる、老親がいる家庭は、避難そのものに迷いを持ちがちです。かろうじて近隣の公園や空き地に避難したとしても、余震や二次被災の懸念や生活環境が整わない場所にとどまることは命に直結するリスクを負うことになります。特に小さなこどもを抱えてこのような避難しか選択できない場合は、家族の命の保証はどこにもありません。

 広域大災害において、私たちのように小さなこどもがいる家庭の多くが直面するのは「逃げる場所がない」恐怖と絶望です。自分たちが暮らす地域以外に逃げる場所を持たない、あるいはそうした避難の選択肢があることすら知らない人が全国には多数います。その現状を変える方法として私たちが提唱するのは「遠隔共助でつながる子育て当事者のつながりづくり」です。

 東日本大震災や熊本地震など、過去の災害で子育て家庭が直面した様々な課題を検証すると共に、現在、子育てに向き合う当事者へのヒアリングを通して、広域大災害から多くの家族を守るセーフティネットである「遠隔共助」の仕組みを全国に広げたいと考えています。

 

 さらに、避難生活が長期化した場合、被災した家族が次に直面するのは今後の生活再建です。災害が大規模であればあるほど、被害が甚大かつ深刻であればあるほど、避難生活は長期化し、残りの人生を避難先で終えることも考えておかねばなりません。特に、縁もゆかりもない場所で、こどもを育てながら生きていくことの不安や寂しさ、孤独、生きづらさは想像に難くありません。

 

 こうした想定に基づき、私たちは広域大災害から生き延びるための選択肢として、「遠隔地への避難」に視点を置きつつ、平時は互いの地域を訪れながら、「観光を伴う往来と交流」の形を取りながら、災害リスクの異なる地域との間で共助の関係を築く「遠隔共助の仕組み」作りに力を注いでいます。

 

【遠隔共助の社会実装に向けて】

  • 全国の子育て支援団体との協働による子育て当事者への調査
     広域災害が起きた時、遠く離れた地域への避難という選択肢があることを知る人はまだまだ少なく、自治体の広域避難の呼びかけに対しても「避難先が用意される」と理解している人が大半であることから、全国の子育て当事者が災害時の避難においてどのような困難が想定されるか、また、広域避難の必要性が迫った時に遠方に避難する選択肢があること、そしてそれを選択するかどうか、選択するにあたっての課題や悩みなどを細かに調査し、本事業の基礎データとします。

     調査は全国の子育て団体の協力により、各地域で同時実施し、調査内容と結果の分析は学識者の指導を受け、学術的にも価値のあるものにします。
  • 全国の子育て支援・防災啓発団体との連携
     遠隔共助の受け皿となる全国の団体と災害協力協定の締結を進めています。2022年には岐阜県岐阜市、2023年には静岡県浜松市の子育て支援団体と災害協力協定を締結。このほか、全国の子育て防災団体と密に関係を結び、平時から防災について学び合う場づくりと並行して、相互にお互いの街を訪れ、その地で避難生活を送る上で必要な条件や課題を共有してきました。
    自治体が推し進める広域避難の最大の「弱点」とも言えるのは、避難先に人のつながりがないことです。私たちはこどもを育てる当事者として、安全安心な生活拠点に加えてこどもの成長を支えてくれる環境や、避難してきた家族を受け入れ、支えるコミュニティの存在が欠かせないと考えています。
    さらに、避難が長期化すれば、そこで仕事を見つけることも必要になってきます。そうしたことも視野に置き、災害で直接的な被災を免れた地域が、被災した家族を受け入れ、子育てコミュニティが受け皿となり、住居や就労機会の提供などの生活支援を整える活動を展開しています。今後、私たちと思いを同じくする団体とつながり、子育て家庭を災害から守る「遠隔共助」の仕組みを全国規模に広げる予定です。
    *この取り組みは2023年4月に「ジャパン・レジリエンス・アワード(国土強靭化大賞)」の準グランプリを獲得しました。

  • 全国に支店や営業拠点を持つ企業との連携(新規)
    全国に拠点を持つ大企業では、出張や転勤により定期的に仕事や住まいの場所を移動する社員が多数在籍し、子育て期の社員が大半を占めます。全国に張り巡らされた企業活動のネットワークを地域防災のセーフティネットとして活用することにより、企業の本支店や営業所を拠点とした各地での遠隔共助の実装が大きく進展すると考えます。従業員規模1万人、支店・営業所100ヶ所程度で全国規模のネットワークを有する企業にモデルケースとして参画いただき、各拠点を子育てと防災両面からの支援の受け皿としてこの仕組みの実装に向けた試行を行います。さらに、子育て中の従業員に対する福利厚生的な視点からもこの仕組みは大きな安心を与え、働きやすい環境づくりに資するものと考えます。

 

【これまでの取り組み】

2022年4月 「遠隔共助」の仕組みづくりに着手。
岐阜県岐阜市の子育て支援団体「特定非営利活動法人こどもトリニティネット」と連携について協議を開始。大阪と岐阜の防災研究者の助言、指導を受け、「遠隔共助」の社会実装に向けた検討を開始。
2022年8月30日 岐阜県岐阜市の「特定非営利活動法人こどもトリニティネット」と「災害時における相互協力に関する協定書」を締結。
2022年9月3日 協定締結の様子がYahoo!ニュースで配信される。
2022年10月 静岡県浜松市の子育て防災団体「しずおか子育て防災ネットワーク」と連携について協議を開始。
2022年10月22日、23日 「ぼうさいこくたい2023」に出展。全国の子育て防災団体と連携に向けた意見交換を実施。
2022年11月12日 静岡県静岡市清水区で発生した断水被害の状況と乳児支援の実例を学ぶ勉強会「生きるはぼうさいのはじまり」を開催。
〜3月31日 子育て家庭のリスクマネジメント及び遠隔共助の有効性に関する勉強会、BCP整備のための勉強会
2023年4月25日、26日 岐阜県岐阜市への遠隔避難シミュレーションの実施。
2023年12月2日 静岡市西豊田地区インクルーシブ防災活動の「避難所トーク」にオンライン登壇
2024年1月17日 静岡県浜松市の「しずおか子育て防災ネットワーク」と「災害時における相互協力に関する協定書」を締結。
2024年2月22日、23日 静岡県庁、浜松市からの立会人が見守る中、調印式を実施。
調印式の様子がNHK静岡ローカルで放映。
静岡県浜松市への遠隔避難シミュレーションの実施。
同市における災害リスク検証と遠隔避難の有効性検証。
同市防災学習センター視察。
2024年3月6日 静岡との協定締結のニュースがNHKで全国放送。
2024年4月10日 「遠隔共助」の社会実装に向けた新しい地域連携の取り組みが、第9回ジャパン・レジリエンス・アワード 準グランプリ・石井啓一特別顧問賞を受賞。

ママコミュ!ドットコムHPでも報告記事を掲載しました。

2024年10月16日、17日 「ぼうさいこくたい2024」に出展。全国の子育て防災団体と連携に向けた意見交換を実施。

 

【事業主体】

広域大災害から全てのこどもと家族を守る「遠隔共助」推進コンソーシアム
共同代表
出水 眞由美(いずみ まゆみ):ママコミュ!ドットコム 代表
西岡 遥奈(にしおか はるな):NPO法人こどもトリニティネット

【パートナー企業・団体】
・一般社団法人災害対策建設協会JAPAN47(フォーセブン)
・特定非営利活動法人レジリエンス教育研究所
・西尾レントオール株式会社
・株式会社MT-NET
・株式会社チューキョーP&G
・田中手帳株式会社
・一般社団法人全国大家の会
・よんなな防災会
・よんなな防災会女子部
・株式会社エシカルノーマル
・株式会社フォーシックス
(順不同)

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